施設見学
「精神疾患がある方に上手に住居を貸す方法」~Part3
私が参加している勉強会主催で、「不動産会社が精神疾患がある方に住居を貸しがたい理由
に関するアンケート」を不動産会社に対して行い、その結果が出ました。
1.貸しがたい理由として
〇一般の住居人とのトラブル回避
〇会社としてイメージダウンに繋がる可能性がある
〇精神疾患がある住居人の生活面の不安
・建物や集金の管理はできても、生活の管理はできない
・掃除が行き届かない人が多い
↓
敷金ではまかないきれないことが多い
〇対応が大変なわりに利益が少ない
2.どのような対応を取れば、貸すことが可能になるか
〇グループホームやサブリース(一棟丸ごと借り上げ)等であれば
〇困ったときの窓口の一本化
〇定期的な訪問、掃除やごみ捨てなどのサポート
〇孤独死防止のシステム導入
〇主治医と不動産屋が話す機会を設ける
以上がアンケートから不動産業者の声を拾ったものになります。
不動産業者が積極的とまでは言えなくても精神疾患がある方に部屋を貸してくれる為には、
2.の対策を行っていく必要があるのはごもっともですが、そもそも1.に上がっている
貸しがたい理由自体が精神疾患がある方への謝った認識である可能性も否定できません。
そこで勉強会では
①精神疾患がある方に実際に起こりうる課題と対処法、地元の支援機関
②住民の不安を解く情報
③精神疾患がありながらも単身生活を送る方の体験談等
を提示するセミナー、不動産会社と精神疾患がある方とが情報交換する場としてのセミナー
を開催するに至りました。
まずはセミナーを通して不動産会社と精神疾患がある方とがお互いに理解し合って、
私達が目指すところのサポート付一般住居へ一歩でも近づいて行けたら幸いです。
「精神疾患がある方に上手に住居を貸す方法」セミナーに参加して~PART2~
前回に引き続き、「精神疾患がある方に上手に住居を貸す方法」セミナーとそれまでの勉強会の復習を兼ねて纏めてみました。
今回は「長期入院患者の地域移行のために必要な施策」を考えることで、なぜ「精神疾患がある方に上手に住居を貸す方法」まで考えなくてはならないのかを検討してみます。
まず、入院患者が地域移行するための要素として時系列で辿っていくと
①精神科病院の理解・協力、
②移行(退院)時の支援が整っていること
③地域移行後の支援が考えられます。
いわゆる地域移行支援としては、③の表面的なことに注目が行き、その手前の①・②になかなか目が行き届きません。①・②が円滑に進む見通しが立つと③の解決にもいい影響を及ぼすので、①・②もしっかりと考えねばなりません。この②の中に住居探し・確保が含まれるのです。
住居探し・確保の現行制度の現状と課題としては、
○1年以上の長期入院のうち14パーセントは退院可能とされ、退院困難者の中でも3分の1は居住や地域移行のための支援がないため退院が困難とされている。
○強引に地域移行を進めればアメリカのように、結果的にオームレスになる精神障害者が増える恐れがある。
○住宅市場をみると既存の賃貸住宅を活用するか、空き家(公共施設等を含む)のリノベーションにより住宅量を確保できる。
○新たな施設、福祉的住居の創設による対応は地域移行とは言えない。
○精神疾患がある方の生活上の課題や家賃負担能力などを心配し、不動産や大家が長期入院患者と直接、賃貸借契約を結ぶことを拒むことが多い。
○長期入院患者に貸与可能な民間賃貸住宅に関する情報を一覧できる仕組みはなく、患者の好みに関係なく貸してくれる物件に地域移行せざるを得ない。グループホームや社会復帰施設から一般住居へ転居するプロセスについても同じ。
○精神科病院が地域移行に熱心であっても、住居探しに成功しない場合は成果が得らないので挑戦できず、経営的にも地域移行は検討しがたい。
○国や自治体は、地域移行の実現に結びつくとは限らない地域移行支援の取組に対して予算を確保することは難しい。
等が上がります。
そこで私達は精神障害者の方に住居を貸すことに否定的な大家・物件管理会社・不動産屋・ネットワークが存在するという実情・否定的に考える理由を的確に把握するべく、アンケートを実施することとしました。
アンケートの結果と、そこから表題のセミナーを開催するまでの経緯・セミナーを開催した後の課題・今後の展開については次回に回すこととします。
「精神疾患がある方に上手に住居を貸す方法」セミナーに参加して
前から何回か調布と大手町で開かれている「サポート付一般住居勉強会」に参加してきました。その延長線上で不動産屋向けのセミナーをしましょうという話になり、私はそのお手伝いをさせていただきました。
今までの復習も兼ねて、全3回の投稿に纏めてみようと思います。
そもそも「サポート付一般住居」とは何かということになります。精神障害がある方がアメリカで実践例のある「サポート付一般住居プログラム」というプログラムに基づいて確保された住居のことを言います。
プログラムの根底には、精神障害がある人もない人も同じ権利と責任を伴い、自分の家で暮らすことができるように、また精神障害がある人が必要なサービスを自分で選べるように支援することが必要であるという哲学があります。
更にそこから派生して6つの原則があります。
①住居が選択できること
②住居とサービスとが機能的に分離していること
③住居が人並みで安全かつ手頃であること
④住居が地域に統合されていること
⑤住居の利用が開かれていること
⑥柔軟かつ自発的でリカバリー思考のサービスが提供されること
上記6つの原則に沿って、例えばプログラム内では個別相談・住居の調整管理人、プログラム外では専門職訪問による支援・地域の支え合いを調整し、充実させることにより、本人を取り巻く包括的なサポートを行っていきます。
では、包括的なサポートをするには誰が必要かが出揃ったところで、プログラムを実現するためにどこに助成をするべきかが問題になってきます。地域の既存の住宅量を把握・分析し、最適な政策を判断することにより、いくつかの実現方法が考えられます。
①住人への助成(テナント・ベース)
・自治体:住人へ家賃補助券を交付。住人:不動産屋へ「家賃+家賃補助券」を支払う。不動産屋:自治体へ家賃補助権を提出し、換金する。
・住宅を選びやすいが、協力してくれる不動産屋が少ない。
②建物への助成(プロジェクト・ベース)
・住宅要配慮者が一定割合以上、住まうことができる住宅の建設あるいはリノベーション時にかかる費用を助成。
・開発に時間と費用がかかるが、長期の利用が可能となりやすい。
③法人への助成(スポンサー・ベース)
・住宅要配慮者に住宅を提供する法人に助成。法人は助成を活用し、任意の住宅を建設またはリノベーションあるいは賃貸する。
助成に関しては上記3つの方法があるわけですが、一般住居プログラムの6原則に照らし合わせると、①が理想である気がします。
実際の事例として、精神障害と薬物依存症の重複障害があるホームレス向けプログラムにおいて、修繕をサービスで行う等により民間家主との信頼関係を構築するとともに家賃を本人に助成し、住居を見つける支援を提供した事例があります。
シリーズ第1回はこれまで。次回は、長期入院患者の地域移行のために必要な施策を考えてみたいと思います。
サポート付一般住居プログラム勉強会
今日はサポート付き一般住居プログラム勉強会でした。参加者は9名。テーマは、この勉強会の原点でもある地域移行に関する最新施策の考え方「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」について、厚労省の吉野さんから直接、話を伺う機会を作りました。
サポート付き一般住居プログラムの勉強会においても、地域の行政計画やその作成プロセスを知り、活用する必要性について割かれていましたが、吉野さんもその必要性を説かれていました。
本日もそうですが、この勉強会の参加者の昼の肩書は、役人、精神保健福祉士や相談員、医師、看護師、行政書士、不動産屋、ピアサポーター、患者、会社員、コンサル等と様々です。このチームで勉強できていることにも感謝でした。
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