「精神疾患がある方に上手に住居を貸す方法」セミナーに参加して
2020-01-29
前から何回か調布と大手町で開かれている「サポート付一般住居勉強会」に参加してきました。その延長線上で不動産屋向けのセミナーをしましょうという話になり、私はそのお手伝いをさせていただきました。
今までの復習も兼ねて、全3回の投稿に纏めてみようと思います。
そもそも「サポート付一般住居」とは何かということになります。精神障害がある方がアメリカで実践例のある「サポート付一般住居プログラム」というプログラムに基づいて確保された住居のことを言います。
プログラムの根底には、精神障害がある人もない人も同じ権利と責任を伴い、自分の家で暮らすことができるように、また精神障害がある人が必要なサービスを自分で選べるように支援することが必要であるという哲学があります。
更にそこから派生して6つの原則があります。
①住居が選択できること
②住居とサービスとが機能的に分離していること
③住居が人並みで安全かつ手頃であること
④住居が地域に統合されていること
⑤住居の利用が開かれていること
⑥柔軟かつ自発的でリカバリー思考のサービスが提供されること
上記6つの原則に沿って、例えばプログラム内では個別相談・住居の調整管理人、プログラム外では専門職訪問による支援・地域の支え合いを調整し、充実させることにより、本人を取り巻く包括的なサポートを行っていきます。
では、包括的なサポートをするには誰が必要かが出揃ったところで、プログラムを実現するためにどこに助成をするべきかが問題になってきます。地域の既存の住宅量を把握・分析し、最適な政策を判断することにより、いくつかの実現方法が考えられます。
①住人への助成(テナント・ベース)
・自治体:住人へ家賃補助券を交付。住人:不動産屋へ「家賃+家賃補助券」を支払う。不動産屋:自治体へ家賃補助権を提出し、換金する。
・住宅を選びやすいが、協力してくれる不動産屋が少ない。
②建物への助成(プロジェクト・ベース)
・住宅要配慮者が一定割合以上、住まうことができる住宅の建設あるいはリノベーション時にかかる費用を助成。
・開発に時間と費用がかかるが、長期の利用が可能となりやすい。
③法人への助成(スポンサー・ベース)
・住宅要配慮者に住宅を提供する法人に助成。法人は助成を活用し、任意の住宅を建設またはリノベーションあるいは賃貸する。
助成に関しては上記3つの方法があるわけですが、一般住居プログラムの6原則に照らし合わせると、①が理想である気がします。
実際の事例として、精神障害と薬物依存症の重複障害があるホームレス向けプログラムにおいて、修繕をサービスで行う等により民間家主との信頼関係を構築するとともに家賃を本人に助成し、住居を見つける支援を提供した事例があります。
シリーズ第1回はこれまで。次回は、長期入院患者の地域移行のために必要な施策を考えてみたいと思います。
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