『私がいなくなったあと、この子は…』〜 親なきあと問題に向き合った82歳母の選択〜
湯口行政書士事務所

「私がいなくなったあと、この子はどうなるのでしょうか」

82歳の女性が、静かにそう切り出されました。
その声には、不安と同時に、覚悟のようなものが感じられました。

ご相談の中心は、ご自身のことではありません。
57歳になる息子さん(Aさん)の将来についてでした。

「この子のことを考えると、夜、眠れなくなるんです」


軽い知的障害と強迫性障害を抱える息子さん

Aさんには、軽い知的障害と強迫性障害があります。

これまで一般企業に就職された経験もありましたが、
現在はグループホームに入所しながら、
B型就労支援施設で働いておられました。

すでに生活保護を受給されており、
日常生活は、福祉制度や支援者の力を借りて成り立っている状況です。


「今の生活が、ずっと続くとは限らない」

お母様が特に心配されていたのは、
この先、環境が変わったときのことでした。

・体調を崩して入院することになったら
・病院の都合で、グループホームを退去しなければならなくなったら
・手続きやお金の管理を、本人だけでできるのか

「そのとき、誰がこの子を守ってくれるんでしょうか」


頼れる親族がいないという現実

Aさんには兄弟が一人いましたが、すでに他界されています。

義理の娘やお孫さんもいらっしゃいますが、
関係性や距離を考えると、
将来を託すのは現実的ではありませんでした。

お母様は、こうおっしゃいました。

「誰かに迷惑をかけたいわけじゃないんです」
「ただ、この子が困らないようにしておきたいだけなんです」


「親なきあと問題」は、今から備えることができます

お話をじっくり伺ったうえで、
私からご提案したのが、成年後見制度の中の『補助人』という関わり方でした。

・財産管理や行政手続きのサポート
・福祉サービス利用時の調整
・入院や環境変化があった場合の対応
・将来の住まいや生活に関する判断支援

日常に近い部分から、継続的に支えていく体制です。


補助人は「必ず選ばれる」わけではありません

なお、成年後見制度における補助人は、
申立書において「候補者」として名前を記載することはできますが、
最終的に誰が選任されるかは家庭裁判所の判断となります。

そのため、相談した専門家が、
必ず補助人に選ばれるとは限りません。

今回は、Aさんの生活状況や、
継続的な支援が必要であることなどを踏まえ、
裁判所の判断により、結果として私が補助人に選任されることになりました。


さらに、お母様ご自身の「任意後見」も

あわせて、お母様ご自身についても、
任意後見契約を結ぶことになりました。

「自分の判断力が落ちたとき、
この子のことで迷惑をかけたくない」

その想いから、
ご自身の終活と、息子さんの将来対策を同時に整えることを選ばれました。


「一人で抱え込まなくてよかった」

手続きが一段落したあと、
お母様は少し表情を緩めて、こうおっしゃいました。

「全部、自分で何とかしなきゃいけないと思っていました」
「でも、誰かと一緒に考えていいんですね」

長年背負ってこられた重荷が、
少し下りた瞬間だったように感じました。


親なきあと問題は「親が元気なうち」にしか備えられません

親なきあと問題は、
備えられる時間に限りがあります。

・親が元気なうちだからこそ、選択肢がある
・本人の状態が安定している今だからこそ、準備ができる

そうした「今だからできること」を、
一つずつ形にしていくことが大切です。


同じような不安を抱えている方へ

○障害のある子の将来が心配

○親族に頼れない事情がある

○親なきあと問題を考え始めたが、何から手をつけていいか分からない

○自分の終活も含めて、まとめて相談したい

その不安は、決して特別なものではありません。

当事務所では、制度の説明だけでなく、
ご家族の状況やお気持ちに寄り添いながら、現実的な選択肢をご提案しています。

「相談してよかった」
そう思っていただける関わりを、これからも大切にしていきます。

(2026年2月4日)



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